2024年版ウィザードは何が変わった?——レベル別変更点と新しい魔法の使い方

「サブクラスの選択がレベル3に延びたって本当?」「Evoker(力術士)は強くなったの、弱くなったの?」——2024年版D&D(5.5e)のウィザードは、派手な新システムこそ増えていませんが、呪文を準備する手順サブクラスの構造が着実に組み替えられています。

この記事では、SRD 5.1(2014年版)とSRD 5.2.1(2024年版)の原文を比較します。SRDに含まれない2024年版PHBのサブクラスについては、D&D Beyondの公式紹介で公開された範囲だけを要約します。

先に結論

準備できる呪文数が「知力修正値+ウィザード・レベル」からクラス表の固定値に変わり、サブクラス選択はレベル2からレベル3へ移動しました。

レベル1にはRitual Adept、レベル2には技能1つの習熟強化を得るScholar、レベル5には小休憩後に準備呪文を1つ入れ替えるMemorize Spellがあります。

2024年版PHBのウィザード・サブクラスはAbjurer、Diviner、Evoker、Illusionistの4種です。2014年版PHBにあり、2024年版PHBに再録されなかった召喚術系統、心術系統、死霊術系統、変成術系統は、公式案内で引き続き使用可能な旧版選択肢として挙げられています。SRD 5.2.1に収録されているサブクラスはEvokerだけです。

全体像——レベル別機能表

レベル2014年版(SRD 5.1)2024年版(SRD 5.2.1)
1呪文発動、秘術回復呪文発動、Ritual Adept、秘術回復
2秘術の学派(サブクラス選択)Scholar
3ウィザード・サブクラス(選択)
4能力値上昇能力値上昇
5Memorize Spell
6秘術の学派の特徴サブクラスの特徴
7
8能力値上昇能力値上昇
9
10秘術の学派の特徴サブクラスの特徴
11
12能力値上昇能力値上昇
13
14秘術の学派の特徴サブクラスの特徴
15
16能力値上昇能力値上昇
17
18呪文体得呪文体得
19能力値上昇偉業の証
20愛用呪文愛用呪文

表の外にも、次の変更があります。

レベルごとの変更点

レベル1:呪文発動とRitual Adept

2014年版では、「呪文書にある儀式呪文なら、準備せずに儀式発動できる」という規定が呪文発動特徴に含まれていました。2024年版では、同じ役割の規定がRitual Adeptという独立した特徴になっています。儀式発動時には呪文書を読む必要があります。

呪文書は呪文発動の焦点具として使えるようになりました。また、呪文書を読めるのは所有者と、呪文書を対象に『アイデンティファイ』を発動している者だけであることも明記されています。

レベル2:Scholar——技能1つを習熟強化

2014年版でサブクラスを選んでいたレベル2には、2024年版でScholarが入ります。〈魔法学〉〈歴史〉〈捜査〉〈医術〉〈自然〉〈宗教〉のうち、すでに習熟している技能を1つ選び、その技能に習熟強化(Expertise)を得ます。

知力を使う技能だけでなく〈医術〉も候補になるため、人物像に合わせて専門分野を選べます。ただし、新しい技能習熟そのものを得る特徴ではありません。

レベル3:サブクラス選択と専門家/Savant系特徴の再設計

サブクラス選択はレベル2からレベル3へ移動しました。2024年版PHBの4サブクラスが持つ専門家(Savant)系の特徴も、内容が変わっています。

2014年版は、対応する系統の呪文を呪文書へ書き写す時間と費用を半分にする効果でした。2024年版では、選んだ系統のレベル2以下のウィザード呪文2つを無料で呪文書へ追加します。その後も、ウィザード・クラスで新しいレベルの呪文スロットを得るたびに、対応する系統の呪文を1つ無料で追加できます。

レベル5:Memorize Spell——小休憩後の呪文入れ替え

Memorize Spellは2014年版になかった特徴です。小休憩を終えるたびに、呪文発動特徴で準備しているレベル1以上のウィザード呪文を1つ、呪文書にある別のレベル1以上の呪文と交換できます。

交換できるのは1回の小休憩につき1つです。準備呪文を全面的に組み直す特徴ではありませんが、偵察後や次の遭遇前に必要な呪文を用意しやすくなりました。

レベル18:呪文体得——選択条件と交換方法が変更

2014年版では、レベル1呪文1つとレベル2呪文1つを選び、最低レベルなら呪文スロットなしで発動できました。8時間研究すれば、選んだ一方または両方を交換できました。

2024年版では、選べる呪文が発動時間1アクションのものに限定されます。選んだ2つは常に準備している扱いになりますが、交換できるのは大休憩を終えるたびに一方だけです。交換先も同じレベルで、条件を満たす呪文でなければなりません。

レベル19:偉業の証

2014年版の能力値上昇に代わり、2024年版では偉業の証特技、または条件を満たす別の特技を1つ得ます。

ウィザードへの推奨は《呪文自在の証》(Boon of Spell Recall)です。【知力】、【判断力】、【魅力】のいずれかを1上げます(最大30)。さらに、レベル1~4の呪文スロットを使って呪文を発動したときに1d4をロールし、出目と使用したスロットのレベルが一致すれば、そのスロットを消費しません。

PHB収録4サブクラス——改訂の全体像

2024年版PHBは、全12クラスに4つずつサブクラスを収録しています。ウィザードの4サブクラスは次のとおりです。

2024年版の名称2014年版での名称主な変更点
Abjurer防御術系統(School of Abjuration)秘術の防壁を呪文スロットで回復可能。Spell Breakerを追加
Diviner占術系統(School of Divination)第三の目を使いやすくし、不可視視認の選択肢を強化
Evoker力術系統(School of Evocation)初級呪文強化と呪文効果範囲操作の取得順を入れ替え
Illusionist幻術系統(School of Illusion)Improved IllusionsとPhantasmal Creaturesを追加

召喚術系統、心術系統、死霊術系統、変成術系統は2024年版PHBに再録されていません。公式の互換性案内では、これら4つは2014年版PHBから引き続き使用できる例外として明記されています。ただし、それぞれのサブクラス自体が2024年版向けに改訂されたわけではありません。

SRD収録サブクラス:Evoker——レベル別新旧比較

SRD 5.2.1に収録されているウィザード・サブクラスはEvoker(力術士)です。ここはSRD 5.1と5.2.1の原文を直接比較できます。

特徴2014年版(力術系統)2024年版(Evoker)
力術の専門家(Evocation Savant)レベル2。力術呪文を書き写す時間と費用が半分レベル3。力術呪文2つを無料追加。以降、新しいレベルの呪文スロットを得るたびに1つ無料追加
初級呪文強化(Potent Cantrip)レベル6。目標がセーヴに成功しても半分のダメージレベル3。セーヴ成功に加え、呪文攻撃が外れた場合も半分のダメージ
呪文効果範囲操作(Sculpt Spells)レベル2レベル6。効果はほぼ同じ
力術強化(Empowered Evocation)レベル10。力術呪文のダメージ・ロール1回に【知力】修正値を加算レベル10。実質的な変更なし
限界突破(Overchannel)レベル14。レベル1~5のウィザード呪文で最大ダメージを与えるレベル14。レベル1~5の呪文スロットを使うウィザード呪文が対象。最大化は発動したターンのダメージに限定

最大の変化は、初級呪文強化と呪文効果範囲操作の取得順が入れ替わったことです。2024年版では、サブクラスを得たレベル3から初級呪文の最低限のダメージを確保できます。ファイアー・ボルトのような呪文攻撃にも適用されるようになりました。

一方、味方を範囲呪文から守る呪文効果範囲操作はレベル6まで待つ必要があります。2014年版の力術系統がレベル2から得ていた代表的な防御機能なので、低レベル帯では明確な違いになります。

限界突破も完全な「変更なし」ではありません。2024年版では、最大化できるダメージが呪文を発動したターンに限定されました。2回目以降に受ける死霊ダメージが抵抗や完全耐性を無視することも明記されています。

SRD非収録のAbjurer・Diviner・Illusionist

以下の3サブクラスは2024年版PHBに収録されていますが、SRD 5.2.1には含まれていません。ここではD&D Beyond公式記事で公開された変更点だけを要約します。

Abjurer

2014年版の秘術の防壁(Arcane Ward)は文言が整理され、呪文スロットを消費してボーナス・アクションで直接回復できるようになりました。

レベル10のSpell Breakerは、カウンタースペルとディスペル・マジックを常に準備します。ディスペル・マジックはボーナス・アクションで発動でき、いずれかの呪文が失敗した場合、その呪文スロットを消費しません。2014年版の防御術強化にあった、ディスペル・マジックの能力値判定へ習熟ボーナスを加える効果も引き継ぎます。

Diviner

第三の目(The Third Eye)はボーナス・アクションで起動するようになり、暗視の距離は120フィートになりました。不可視視認の選択肢では、シー・インヴィジビリティを呪文スロットなしで発動できます。2014年版のエーテル界視覚と不可視視認の利点をまとめた変更です。

Illusionist

Improved Illusionsは、2014年版のマイナー・イリュージョン強化を取り込み、幻術呪文の音声要素を無視する、特定の呪文の射程を延ばす、マイナー・イリュージョンをボーナス・アクションで発動するといった利点を加えます。

レベル6のPhantasmal Creaturesでは、Summon BeastとSummon Feyを常に準備します。両方を幻術呪文として発動し、変化を加えたクリーチャーを召喚します。また、それぞれを大休憩につき1回、呪文スロットなしで発動できます。

幻影変り身(Illusory Self)は、攻撃ロールを行われた時点ではなく、攻撃が命中したときに使うよう整理されました。レベル2以上の呪文スロットを消費すれば、アクションなしで使用回数を回復できます。

サプリメントで改訂されたブレードシンガー

ブレードシンガー(Bladesinger)は2024年版PHBの4サブクラスには含まれていませんが、2025年11月発売の『Forgotten Realms: Heroes of Faerûn』で2024年版向けに改訂されました。同書はブレードシンガーを含む、新規・改訂サブクラス8種を収録しています。

D&D Beyondの公式紹介によると、刃の歌(Bladesong)は移動と防御を高め、戦と歌の修行(Training in War and Song)は技能と武器の扱いを強化します。その後、追加攻撃、呪文スロットを防御へ変える守りの歌(Song of Defense)、呪文発動の直後に武器で攻撃する勝利の歌(Song of Victory)を得ます。

数値や正確な発動条件はSRDに含まれないため、ここでは踏み込みません。収録書籍全体については『Forgotten Realms: Heroes of Faerûn』紹介で整理しています。

総評

2024年版ウィザードは、別のクラスになるほどの大改造ではありません。変更の中心は、準備呪文数の固定、初級呪文の交換、Ritual AdeptとScholarの追加、Memorize Spellによる対応力の向上、サブクラス開始レベルの統一です。

Evokerは初級呪文を早い段階から安定させやすくなった一方、呪文効果範囲操作の取得は遅くなりました。限界突破にも適用タイミングの明確化があります。単純な全面強化ではなく、レベル帯ごとの役割を組み直した改訂と見るのが適切です。

2024年版PHBに再録されなかった4学派は引き続き使用できますが、サブクラス本文は2014年版のままです。2024年版向けに改訂された選択肢を使いたい場合は、PHB収録の4種や、その後のサプリメントを確認してください。

関連記事

参考資料

※2014年版で既訳のある用語は、サイト内の2014年版用語集に従って日本語を主体に表記しています。2024年版で正式な日本語名を確認できない特徴名・サブクラス名は、英語原文を主体にしています。