レイヴンロフト16の戦慄界——17の暗黒卿と恐怖の舞台

『Ravenloft: The Horrors Within』は、16の戦慄界と17の暗黒卿を大きく扱っています。バロヴィアとストラードだけでなく、毒と陰謀、ゾンビ包囲戦、幽霊屋敷、肉体改造、宇宙的恐怖など、異なる種類のホラーから舞台を選べます。

先に結論

戦慄界は、暗黒卿の罪や執着を映して作られた牢獄です。本書では各戦慄界に、暗黒卿のデータ・ブロック、すぐ始められる短編アドベンチャー、長期キャンペーンへ発展させる案が用意されています。どの領域を選ぶかは、登場人物より先に「どんな恐怖を扱いたいか」で考えると決めやすくなります。

本書の内容はSRD 5.2.1には収録されていません。この記事では公式目次と紹介記事で公開されている範囲を中心に、数値やアドベンチャーの展開を転載せず、各戦慄界の入口を整理します。固有名は正式な日本語表記を確認できたものだけ日本語を主体にし、それ以外は英語で表記します。

戦慄界とは

戦慄界は、影界に隠された孤立した小世界です。領域の形、歴史、住民の認識は通常の世界ほど安定しておらず、悪夢の論理に従って変化することがあります。

戦慄界には共通する特徴があります。

暗黒卿は領域を支配する暴君とは限りません。眠り続ける怪物、持ち主を支配する武器、敗北を繰り返す英雄など、存在の形も領域との関係も異なります。

16の戦慄界と17の暗黒卿

Borcaには暗黒卿が2人いるため、戦慄界は16か所、暗黒卿は17体です。

戦慄界暗黒卿ホラーの方向性
バロヴィア(Barovia)ストラード・フォン・ザロヴィッチ永遠の霧、ヴァンパイア、呪われた城を扱うゴシック・ホラー
BorcaIvana Boritsi、Ivan Dilisnya毒、貴族社会、家同士の陰謀と裏切り
DarkonAzalin Rex強大な魔術、アンデッド、失われる記憶と崩壊する国
DementlieuSaidra d’Honaire仮面舞踏会、身分への執着、偽りで保たれた都市社会
FalkovniaVladeska Drakovゾンビの大群に包囲された軍事国家と終わらない防衛戦
Har’AkirAnkhtepot灼熱の砂漠、古代墓所、ミイラと死者の王
HazlanHazlik制御を失った魔法、魔術実験、変質していく土地
InnsmouthCthulhu水没した遺跡、異界の存在、狂信者を扱う宇宙的恐怖
KalakeriRamya Vasavadan王家の内戦、家族の裏切り、死者を巻き込む権力争い
KartakassHarkon Lukas歌と名声を求める社会、その裏に潜む獣性と捕食者
LamordiaViktra Mordenheim科学による蘇生、肉体改造、汚染された極寒の工業地帯
MordentWilfred Godefroy海岸の霧、幽霊屋敷、過去に取り憑かれた死者
ShadowlandsEbonbane腐敗した英雄像、正義を口実にした残酷さ、呪われた武器
Sithicusソス卿(Lord Soth)滅びた騎士道、罪と後悔、終わりのない暗い戦場
TepestMother Lorinda閉鎖的な村、儀式と祭り、ハグを中心とする民間伝承ホラー
ValachanChakuna密林での追跡、強者による狩り、逃げ場のない生存競争

同じ「ホラー」でも、必要な冒険の作り方は大きく違います。Dementlieuでは会話と身分の偽装、Falkovniaでは資源と防衛、Valachanでは追跡と脱出が中心になります。

公式紹介で扱われた暗黒卿

公式紹介では、ストラード、Cthulhu、Viktra Mordenheim、Ankhtepot、Ebonbaneが詳しく取り上げられています。人型の支配者だけでなく、宇宙的存在や意思を持つ武器も暗黒卿になり得ることが分かります。

ストラード・フォン・ザロヴィッチ

ストラードは、バロヴィアとレイヴンロフトを代表する暗黒卿です。征服者としてバロヴィアを支配し、嫉妬と欲望から弟を殺し、ヴァンパイアになりました。現在もタチアナの生まれ変わりを求めますが、手に入れられない状況を永遠に繰り返します。

バロヴィアは、孤立した村、霧に覆われた荒野、城、ヴァンパイアという、古典的なゴシック・ホラーの舞台です。ストラードは強力なヴァンパイアであるだけでなく、魔法と魅了を使う支配者として登場します。

Cthulhu

Cthulhuは、罪を犯した人間から暗黒卿になった存在ではなく、現実の外から来た原初的な宇宙的存在です。Innsmouthに閉じ込められた後も、夢を通して外の世界へ影響を与え、信奉者に解放の儀式を進めさせます。

Innsmouthには、異質な山脈、水没した遺跡、崩壊した集落、対立する教団があります。敵の目的を完全には理解できず、現実そのものが信用できない宇宙的恐怖を扱う領域です。

Viktra Mordenheim

Viktra Mordenheimは、魔法ではなく科学によって死者を蘇らせようとする研究者です。Lamordiaの城塞研究所で実験を続け、かつて完成させたUnbreakable Heartを再現しようとしています。

Lamordiaでは、実験で作られた怪物、化学的に動くアンデッド、汚染された川や森が、極寒の風景に広がります。身体を部品として扱う倫理の欠如と、発展の代償を描く肉体的・環境的ホラーの舞台です。

Ankhtepot

Ankhtepotは、かつてファラオを裏切った大祭司です。死ねない身体と魂の一部を失う呪いを受け、Har’Akirの不死のファラオとなりました。現在の望みは権力の拡大ではなく、失われた魂を取り戻し、ようやく死を迎えることです。

Har’Akirは、黒曜石の砂、古代墓所、苛烈な暑さに覆われています。地下には罠と死者が待つ墓所が広がり、都市ではAnkhtepotの名による宗教的支配が行われています。

Ebonbane

Ebonbaneは、悪意を集めて作られた意思ある武器です。英雄Kateri Shadowbornと仲間たちの破滅を導き、現在はShadowlandsのShadowborn Manorに縛られています。誰かに持ち運ばせ、その人物を支配することで外へ影響を広げます。

Shadowlandsの中心にあるのは、英雄と正義の腐敗です。善を掲げる人物が、その正義を理由に残酷さを正当化していく物語に向いています。

暗黒卿は「倒す敵」とは限らない

本書には17の暗黒卿のデータ・ブロックがあり、戦闘の中心となる強敵として使用できます。一方、暗黒卿を必ず最後に倒す必要はありません。

暗黒卿は領域の恐怖を生み出す中心ですが、毎回直接対決させる必要はありません。姿を見せる前から、法律、噂、怪物、天候などを通じて影響を感じさせられます。

短編とキャンペーンでの使い分け

16の戦慄界には、それぞれすぐ始められる短編アドベンチャーと、D&D BeyondのMaps VTT用Quickplay Mapが用意されています。さらに、異なるレベル帯で長期キャンペーンへ発展させるための案も収録されています。

短編で使う場合は、領域のすべてを説明する必要はありません。

  1. 霧によって領域へ迷い込む
  2. 領域を象徴する事件に巻き込まれる
  3. 暗黒卿の影響を知る
  4. 事件を解決し、霧が開く条件を満たす

長期キャンペーンでは、暗黒卿の執着と領域の住民を掘り下げます。複数の戦慄界を巡る場合は、Mist Talismanやタロッカ・カードを、次の領域への手掛かりとして使えます。

遊びたい恐怖から選ぶ

遊びたい内容候補となる戦慄界
古典的な城とヴァンパイアバロヴィア
毒と貴族の陰謀Borca
仮面舞踏会と社会的な嘘Dementlieu
ゾンビ包囲戦Falkovnia
砂漠の墓所探索Har’Akir
宇宙的恐怖と邪教Innsmouth
科学と肉体改造Lamordia
幽霊屋敷と怪談Mordent
腐敗した騎士と英雄Shadowlands、Sithicus
村の祭りと民間伝承Tepest
怪物に追われる生存劇Valachan

キャンペーン開始前には、選んだ領域が扱う題材をプレイヤーへ共有し、描写してよい恐怖と避ける恐怖を確認します。特に肉体変容、洗脳、家族への危害、閉鎖空間などは、参加者によって受け止め方が大きく異なります。

参考資料

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