D&Dに銃が来た——ピストルとマスケットの性能・装填・武器熟達

剣と魔法の世界のはずが、2024年版D&D(5.5e)の基本装備表にはピストルマスケットが並んでいます。オプションルールや別冊の付録ではなく、無償公開されているSRD 5.2.1の武器表に、ロングソードやロングボウと同じ並びで載っている——これは地味に驚きの変更です。この記事ではSRD原文を根拠に、性能・連続攻撃の可否・習熟・武器熟達までを整理します。

性能——d10とd12、しかも武器熟達つき

武器ダメージ特性熟達特性射程重量価格
ピストル1d10[刺突]矢弾(射程30/90;弾丸)、装填Vex30/90フィート3ポンド250GP
マスケット1d12[刺突]矢弾(射程40/120;弾丸)、装填、両手用Slow40/120フィート10ポンド500GP

比較用に、既存の遠隔武器も並べます。

武器ダメージ射程価格
ロングボウ1d8[刺突]150/600フィート50GP
重クロスボウ1d10[刺突]100/400フィート50GP

ダメージ・ダイスだけ見るとマスケットの1d12は遠隔武器最大クラス。ですが射程はロングボウの4分の1以下、価格は10倍という、率直に言って「割に合わない」スペックです。ダメージ表記が武器熟達対応済みで、ピストルはVex(次の攻撃に有利)、マスケットはSlow(命中で敵の移動速度低下)——役割としてはレイピア・ショートボウ系とロングボウ系の立ち位置をそのまま引き継いでいます。

連続攻撃はできるか——「装填」の意味

ピストルもマスケットも装填(Loading)という特性を持ちます。SRD原文の定義はこうです。

装填特性を持つ武器は、アクション・ボーナス・アクション・リアクションのいずれでそれを撃つ場合も、通常行える攻撃の回数に関わらず、1回の使用につき矢弾を1つしか発射できない

つまり、たとえ追加攻撃を持つファイターでも、1挺のピストルからは1アクションにつき1発しか撃てません。「連射」という発想自体が、この武器にはありません。

ただし——この制限は「1挺の武器につき」です。あらかじめ複数のピストルを装填して両手に構えておけば、追加攻撃の1回1回を別のピストルで撃つことで、実質的に複数発を撃つことができます。海外の攻略記事でも「装填済みのピストルを何挺も提げた、まさに海賊のような戦い方」が定番の運用として紹介されています(参考: Wargamer)。ロマンはありますが、その分だけ所持数と初期投資(1挺250GP)がかさむ構えです。

誰が習熟するか——「ローグの銃使い」は実は素直に作れない

武器表でピストル・マスケットは「軍用遠隔武器(Martial Ranged Weapons)」に分類されています。武器の習熟は「単純」「軍用」というカテゴリー単位で与えられるのが基本ルールです。

クラス軍用武器への習熟
ファイター・バーバリアン・パラディン・レンジャー○(単純・軍用とも全面習熟)
クレリック・ドルイド×(ただし一部サブクラスで軍用武器習熟を獲得)
ローグ△(妙技(Finesse)か軽量(Light)を持つ軍用武器のみ
モンク△(軽量(Light)を持つ軍用武器のみ
バード・ソーサラー・ウォーロック・ウィザード×

ここが今回いちばんの意外ポイントです。ピストルにもマスケットにも妙技も軽量の特性は付いていません。つまりSRDの基本ルールだけで見ると、ローグもモンクも、ピストルに習熟していません。「隠密行動から拳銃を一撃」というガンスリンガー的なイメージは自然に湧きますが、素のルールではむしろファイター・バーバリアン・パラディン・レンジャーの領分です。

なお、クレリックとドルイドはクラスとしては単純武器のみですが、SRD収録のサブクラス(クレリックの「守護者」、ドルイドの「守り手」)を選ぶと軍用武器の習熟を獲得します。ここ経由でピストルを持つクレリックも、ルール上はありえます。

習熟がなくても、武器そのものは誰でも持てます。 SRD原文は「誰でも武器を扱えるが、攻撃ロールに習熟ボーナスを乗せるには習熟が必要」としており、習熟なしでの携行・発射自体を禁じてはいません。ただし習熟ボーナスが乗らないうえ、武器熟達のVex・Slowも「それを使わせてくれるクラス特徴」がなければ発動しません。

弾薬——1発あたりの実費

矢弾(Ammunition)特性を持つ武器は、攻撃のたびに矢弾を1つ消費します。ピストル・マスケット共通の弾丸は次の通りです。

戦闘後に1分かけて、使った矢弾の半分(端数切り捨て)を回収できるのは他の遠隔武器と共通のルールです。武器本体(250〜500GP)に比べると弾薬コストそのものは軽く、継続コストより初期投資がネックになる武器と言えます。

世界観への導入——ルール上は「普通の武器」

意外に思われるかもしれませんが、SRD 5.2.1の武器表を見る限り、ピストルとマスケットには「導入は任意」「DMの許可が必要」といった特別な注意書きは一切なく、ロングソードやハンドクロスボウとまったく同じ扱いで並んでいます。旧2014年版では『Dungeon Master’s Guide』に「火器(Firearms)」という独立した区分と、時代設定に応じて使うかどうかをDMが決める旨のガイダンスがありましたが、2024年版の基本ルールにはそうした独立区分自体が存在しません(原文中で”firearm”の語が使われるのは弾薬名と製作対象の列挙程度で、武器カテゴリーの見出しとしては登場しません)。

とはいえ、「剣と魔法」を軸にした世界観のテーブルで、断りなく火薬武器が出てくれば違和感は生まれます。ルール上は他の武器と地続きでも、採用するかどうかは結局テーブルごとの相談事項——という点は、他の任意ルールと変わりません。「銃のある世界観にするかどうか」を卓開始前に一言決めておくのが、実務的にはいちばん角が立たない運用です。

まとめ

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